広告の効果測定とは
広告は今や、商品、サービスを売る必要不可欠なツールのひとつです。企業は、売上アップを期待して予算を立て、広告を出します。
しかし、広告を出した後、きちんとその効果を測定されておられるでしょうか。
認知度の向上/商品販売/サービス利用/お問い合わせの増加/予約獲得/資料請求
がどれだけ増え、売上につながったか、その費用対効果(コストパフォーマンス)を測定すれば、成功、失敗が自ずと見えてきます。
そして勝因は踏襲し、敗因は廃止していくことで成功率は高まり、これからの広告展開が有利となるため、広告主のみなさまには、ぜひ広告の効果測定をしていただきたいのです。
そこで本章では、交通広告以外の一般的な広告の主な広告効果測定方法について、解説していきます。
テレビ視聴率
テレビにCM(コマーシャル広告)を流すなら、より多くの人にリーチできる視聴率の高い番組のスポンサーになりたい、CMを流したいと誰もが考えるはずです。
早朝・深夜帯などは視聴者が限られるため広告費も安く、ゴールデンタイム(19時~22時)、プライムタイム(19時~23時)は多くの人が自宅に居て、テレビを視聴している可能性が高いことから、広告費は高く設定されています。
シンプルに高視聴率の人気番組にCMを流せば、一定の効果があると言えますが、今では、
・平均視聴率
・最高瞬間視聴率
・タイムシフト視聴率
・テレビCM視聴率
といったデータが、わかるようになっています。
テレビCMを検討している場合、広報部、宣伝担当者は、
・GRP(視聴率×CM本数)
・GAP
という指標を覚えておかれるといいです。
GRP(Gross Rating Point)はテレビCM視聴率のひとつの指標で、対象エリアでどれくらいの人が、テレビCMが流れた瞬間、そのチャンネルを選局していたかを調べたものです。
テレビCMの多くが15秒単位で流されており、GRPも15秒=1単位となります。視聴率が高くなればなるほど、またオンエアの回数を増やせば増やすほどGRPの値は大きくなります。
GRPは、テレビCMの設定単価も左右する重要な指標であることも、付言しておきます。
一方GAP(Gross Attention Point)は、2010年代に新しくテレビCMの効果測定指標として登場したもので、アテンションは「注目」の意であり、対象エリアでどれくらいの人が、テレビCMが流れた瞬間、そのCMを注視していたかを調べたものです。
視聴率測定機器にセンサーカメラを搭載し、顔認証技術を駆使して、
・(家族の)誰が見ていたか
・画面をどの程度見ていたか(アテンションインデックス AI値)
を測れるところまで、技術が進化しました。
誤解なきようにお伝えすれば、GRPがもう古くて使えない指標ということではなく、GRPとGAPを組み合わせることによって、より正確なテレビCMの効果が測定できるようになったと言えるのです。
WEBサイトのインプレッションやクリック数
WEBサイトに掲載されるリスティング広告や、検索画面に表示される検索連動型広告などのWEB広告なら、広告掲載期間中のインプレッション数(表示回数)や、クリック数、コンバージョン数(お問い合わせ件数)も確認することができます。
オンタイムで広告の効果測定ができるため、思わしくなければ途中で取り下げ、広告テキストやバナーを変えたり、AとBの2パターンの広告を出してその効果を比較するABテストを行って、どっちで行くかを決めたりすることも可能で、一度出せば変更が効かない広告と比較すると、時間・予算・内容の選択肢が多く自由度が高いのが特長です。
新聞の発行部数
新聞広告や折り込み広告の効果は、正直なところ発行部数によると言え、発行部数が多ければ多いほど、見られる確率が増え、広告の効果が期待できます。
ちなみに大手5誌の1日の発行部数は、
日本経済新聞社 175万部
産業経済新聞社 102万部
毎日新聞社 193万部
朝日新聞社 429万部
読売新聞社 686万部
です。(数値は日経業界地図2023年版より)
雑誌のABCレポート
発行社(売り手)・広告主(買い手)・広告会社(代理店・仲介)から成る日本ABC協会が、広告取引の公正性と透明性を図るために新聞や雑誌、専門誌、フリーペーパーの販売・配布部数を調査、公開しています。
ここまでお伝えしてきたようにテレビ視聴率やWEBサイト広告の効果測定方法は、技術の進化で、広告効果測定の精度がかなり高まってきたと言えます。
これまでの交通広告の効果の測定方法
前章では、テレビ、WEBサイト、新聞、雑誌の広告効果測定についてお伝えしましたが、本章では、長い歴史を持つ交通広告の効果の測定方法についてお伝えします。
主に輸送人員、乗降人員、アンケート調査の3つが代表的なものです。
輸送人員
中吊、デジタルサイネージといった電車広告、バス広告を出す場合、その輸送人員がカギとなります。
電車の輸送人員は、区間の定期券、切符の発行状況、車掌の巡回で把握することができ、バスの輸送人員もまた、回収した整理券の枚数や、運転乗務員の目視でカウントしています。
乗降人員
駅の看板、駅貼ポスター、柱巻、フラッグ広告、改札機ステッカーなどを検討されているなら、乗降人員を参考にしたいです。
先にお伝えしたように乗降人員は、区間の定期券、切符の発行状況、車掌の巡回や運転乗務員の目視で確認をしていました。
もちろん今では、輸送人員、乗降人員共に、自動改札機のデータでも、把握しています。
アンケート調査
交通広告を出した後、企業や店舗がお客様などに独自のアンケートを実施して「何で知ったのか」を尋ね、寄せられた回答で、その広告の効果を測定していました。
また、ビデオリサーチが展開しているSOTO exでは、無作為に抽出した東京と関西の調査対象者の方に専用の端末を貸与し、携帯して普段通り動いてもらうだけで、通信機能を介して
・利用状況(電車・バス・タクシー 路線・駅・街・道路)
・注視した広告(交通広告・屋外広告・店頭広告)
・メディアとの接触状況(テレビ・ラジオ・インターネットなど)
などを集計・分析することが可能となっています。
ここまで交通広告の効果測定方法についてお伝えしてきましたが、やはりまだ課題が残された状況と言えます。それは次章に譲ります。
これまでの交通広告の効果指標の問題点
前章では、これまでの交通広告の効果の測定方法をご紹介してきましたが、SOTO exのように通信機能端末を活用することで、これまでの交通広告の効果指標における問題点を払拭できるところまで来ているのです。
その問題点は、実は3つあるのですが、詳しくお伝えしていくこととします。
鉄道に乗っている人や駅を利用している人が広告を見ているかどうかわからない
テレビCMでも同じことが言えるのですが、リビングのテレビをつけていても、キッチンにいたり、スマートフォンを見ていたりしていれば、その広告を見ていないことになります。
GRP上はカウントされますが、残念ながらGAP上では効果があったとはみなされず、数値としてカウントされないということです。
この現象は、交通広告でも普通に起こりえ、すべての鉄道利用者が広告を見ているとは言い切れません。
鉄道利用者は、
通勤/通学/通院/用事/旅行
などさまざまな目的を持った人たちがホームに立ち、在来線や特急・新幹線を乗り降りしています。
旅行で訪れたり、鉄道が好きで積極的に出かけたり、日々、情報のアンテナを張り巡らせているような方なら、駅構内を散策したり、広告に目を向けたりする心の余裕があるかもしれません。
一方で朝、夕のラッシュの時間帯、会社や学校に「遅刻しないように」足早に向かっている多くの方は、広告を見ていない可能性が高いため、これまでの測定方法では精度に欠けると言えます。
広告を実施している鉄道や駅を利用しても広告の前を通過しているかわからない
駅、改札、ホーム、車両と交通広告はさまざまな場所に設置できるように枠が用意されているのですが、大切なのは行き交う人々の目に留まるかどうかです。例えば利用者の少ない駅、ごく一部の人しか利用しない改札付近、ホームの端などに広告を出しても、その効果を期待することは、難しいでしょう。
多くの人が広告の前を通れば通るほど、広告効果が大きなものとなります。交通広告を出す際は、どの場所に広告を設置できるのか、そこは利用者の動線に沿った場所なのかを、しっかりと確認して、出稿を検討すべきです。
広告を見た後、どのような行動をとったかがわからない
序盤で述べたWEBサイトの広告であれば、
・バナーやリンクをクリックしたか
・サイトに訪問したか
・お問い合わせをしたか
・商品購入に至ったか
などが追跡できるようになっていますが、交通広告を見た人のその後の行動を正確に知る由がありません。
ここは、先述のアンケート調査などから地道に、行動を追うしかないのです。
交通広告業界で検討されている効果測定
ここまで現状の交通広告の効果測定方法と問題点を見てきましたが、これらを改善すべく登場してきた、新たな効果測定方法が、
・交通広告共通指標
・アイトラッキング調査
・位置情報データを活用した調査
で、これより詳しくお伝えしていきます。
日本交通広告協会の「交通広告共通指標」
交通広告業界における大きなできごとと言えるのですが、2013年より『交通広告共通指標推進プロジェクト』が始動しています。
「公益社団法人日本鉄道広告協会」「一般社団法人日本広告業協会」「関東交通広告協議会」が、インターネット上で「車両メディア調査」を行っています。
中吊、まど上、ドア横、ステッカー、車内ビジョンの5つの媒体について実際に掲出されていた広告を示し、「見た」「見たような気がする」との回答から、広告到達率を割り出しています。
アイトラッキング調査
テレビ視聴率の項でもお伝えしたアテンションインデックスのように、デバイスやセンサーを用いて、モニターの視線を計測したり、瞳の動きを確認したりし、交通広告を見たかだけではなく、広告のどこを見ていたか、何に注視していたか、どの程度見ていたかなどをデータ化し、交通広告の効果を測定しようとするものです。
位置情報データを活用した調査
交通広告をはじめとするOOHについては、精度の高い効果測定ができないものとされてきましたが、携帯電話基地局、GPS、Wi-Fiアクセスポイントのデータを活用し、スマートフォンやモバイルの位置情報を分析することで、
・広告到達回数
・アクション
・属性
などの測定が可能で、理論上はサイト流入、商品購入、来店など交通広告を見た人のその後の行動を正確に把握できるところまで技術は進化したのです。
位置情報を使って、スマートフォンやデバイスに広告を配信するサービスも登場し、交通広告とWEB広告のコラボも現実のものとなっています。
将来の効果測定の未来図
顔認証
デジタルサイネージなどにカメラを設置すれば、顔認証システムを機能させることが可能です。顔認証は、防犯システムなどで本人を特定できるほど高性能ですが、顔認証の技術を応用して、行き交う人たちを性別、年代別にグルーピングすることも可能です。
デジタルサイネージ広告を見た男女の比率や、年代別の人数、表情解析でどのような反応を示したかまで分析できるほか、目の前を通る人を素早く察知して、その性別・年代にマッチした広告に切り替え表示することで、広告最適化を図ることも夢ではないところまで来ているのです。
改札口の出入りのビッグデータの活用
今では多くの駅やバスで自動改札機が導入されており、ただ切符やICカードを読み取って利用者を通過させるだけではなく、機械で利用者の乗車区間、乗降駅といった情報を収集し、輸送人員、乗降人員などを分析し、時間単位で細かく測定することも可能となっています。
また、改札口にカメラを設置することで、自動改札機では読み取れない、性別、年代、服装などヒトの手では処理しきれないさまざまなビッグデータを補完的に収集し、AIなどで解析させることで、広告を出すべき場所やタイミングなどを予測、かなり精巧な広告効果の測定も実現できるのではと期待されています。
まとめ
交通広告の効果測定は、これまでアナログ的な手法がとられていましたが、テレビやWEB広告の効果測定と同様に、技術の進歩によってデジタルで交通広告の効果測定ができるところまで来ました。
これまで交通広告は、認知度の向上やブランドイメージの定着を図るといった役割が強めでしたが、顔認証、ビッグデータを活用して、行き交う人たちの行動を促し、性別・年代に合わせた広告を出し、精度の高い測定結果を得られる日も、そう遠くはないのです。
WEB広告などと比べると効果測定は遅れ気味ですが、様々なデータが出てきております。交通広告は効果測定が出来ないとあきらめる前に、最適な効果測定を一緒に考えますのでご相談ください。
その他、広告に興味があるけど何から始めたら良いかわからないといった質問から、広告の予算や時期、目的が決まっているので提案が欲しいといった具体的な問合せまで、気になることがあれば、問い合わせフォーム または電話(Tel 06-6621-1483)まで何でもご連絡ください!